私は自分の気持ちを自覚すると同時にこの恋をあきらめる事に決めた。

それなのに、あきらめたはずの恋の相手に頻繁に会わなければならないという重荷を背負ったまま時間だけは残酷に過ぎていく。

あれから一年。

私は今でも吉田さんと家族のような付き合いをしている。

吉田さんと仲良くするとママは喜び、私は苦しい想いに窒息しそうになる。

写真たての中の写真は去年の夏休みに出かけた旅行で撮ったものだ。

笑顔で幸せそうなママと吉田さん。そして、一生懸命笑おうと努力して困ったように歪んだ笑顔を浮かべる私。

この写真を見るたびに私は悲しい気持ちになる。

食事中もママはご機嫌だった。

不揃いな形の野菜達を詰め込んだカレーは甘くてお子様な味がした。

「遥日ちゃん、おいしい?」

「うん。おいしいよ」

「よかった」

 私はママが大好きだ。

おっとりした性格だけど、頑張りやで可愛い。私はママが愚痴を言った姿を見た事がない。私が男でもきっとママみたいな人を好きになるだろう。

「……ママね、今日は遥日ちゃんに話したい事があったの」

 ママがそう切り出したのは、私が自分の分のカレーライスを半分食べ終えた時だった。