胸がきゅうと痛くなって、どういうわけだか二人の間に割って入りたいような気持ちになった。
それでも私は自分が『ママの恋人』を変な意味で好きになるはずがないって思っていた。
だって私はママが私を抱えて今までどんなに苦労してきたか知っている。
パパが死んでしまって十年だ。ママが他の男の人と幸せになっても祝福してあげられる自信があった。
だってママの幸せを一番に願っていたのは他でもない私なのだから。
それなのに、吉田さんに話し掛けられると嬉しくなってしまって気持ちが舞い上がってしまう。
それだけじゃない。吉田さんを誰にも渡したくない、吉田さんがママじゃなくって私の恋人だったらいいのに……そう思ってしまうのだ。
ママにも渡したくない。
こんな感情は初めてのことだった。
それでも幸せなママと吉田さんを見ているうちに自分がどんなに吉田さんの事を好きになろうと望みがないのは分かっていた。
だって吉田さんが私に優しいのは、恋人であるママの娘だからだ。
私の存在はそれ以下になる事がないかわりに、以上になる事もない。
あきらめよう。
もともと望みのない想いだ。


