「そういえばね、朝尾崎君に言われたんだ。『俺らのセフレのこと知ってんだろ』って」


何でか、頭に浮かんだのがこの話題だった。


「ふーん、まあいいんじゃない?知っちゃったもんは仕方ないし」


相変わらず佳耶は強気だった。


いつもと変わらない佳耶が何だか凄く温かかった。


今日1日でこんなにたくさん揺れ動くなんてね。


自分でもびっくりだよ。


「じゃあね南美!また明日!」


春のやわらかくて温かい夕方の日ざしの下、佳耶とバイバイした。




『尾崎君が気になる』


そう気付いて1週間がたった。


佳耶や流菜ちゃんとは当たり前のように一緒にいるし、神崎涼に対する気持ちも変わっていない。


あたしに気持ちは、まだ佳耶や流菜ちゃんには言ってない。


やっぱり『好き』にはならなかったよ。


尾崎君を見てドキドキすることがあっても、今まで通りだった。


感覚で分かる、決して一線越えはしなかった。


『気になる人』なだけでこんなに苦しいなんて、『好き』になったらどれだけ大変なんだろう。


もしかして『好き』になった方が楽なのかな?



佳耶や流菜に言えるだけでどれだけ楽になれるのかな。