切恋~First Love~



「神崎涼にがうざかったら、お互い愚痴を言い合って」


「うん」


「神崎涼に傷つけられたら、1番に相談し合って」


「うん」


「それで、神崎涼に嬉しいことされた時も、2人で騒いで」


「・・・うん」


「神崎涼といて、喜びを感じたら、2人で分け合って」


「・・・っうん」


「それで、いいと思う」


あたしも・・・。


「あたしも、そう思うっ・・・」


佳耶の言葉が、心に染み渡る。


カラカラに乾燥していたあたしの心が、水で潤っていく感じ。


1ヵ所に流れ落ちた水が、どんどん周りに浸透していく。


そんな感覚。


「じゃあ決定!南美、早く戻んなきゃ怒られるよっ。行こっ」


「あっ」


きれいに忘れていた。


あたし達はペンキの入った缶を両手で抱え、急いで教室に戻った。


今さっき話してた時の雰囲気なんて、なかったかのように。



「おっそーいっ!倉橋さんっ、藤井さんっ、何してたのっ!?」


教室に帰ってから、あたし達が体育祭の実行委員に怒られたのは、言うまでもない。


「あ、ねぇ南美。後から流菜ちゃんにも、言わないとね・・・?」


作業中、佳耶がそっと耳打ちをしてきた。