「・・・南美、話してくれてありがとね。あたしも言おうと思ってたんだけど・・・どうしても言いづらくてさ」
佳耶が遠慮がちにそう言う。
「ううん、あたしも言えなかったから・・・」
ガチャガチャとペンキの入った缶がぶつかる音がする。
「南美、最後に1つ」
「うん?」
「あたしと神崎涼がセフレになったって・・・何となく気付いてたの?」
言われた瞬間、佳耶と神崎涼のあの暗闇でのキスシーンがフラッシュバックする。
気付いてない、と言えば嘘になる。
「気付いてたっていうか・・・。夏休み中に、佳耶と神崎涼がキスしてるとこ見ちゃって・・・」
「キス・・・・・・あぁ、あれ・・・」
「ごめん・・・」
・・・盗み見?って言うのかな。
それが凄く悪い行為な気がして、謝罪の言葉が無意識に口から出た。
「だから、南美は悪くないじゃん!どっちかって言うと、あたし達の方に非があったんだし」
佳耶はあたしの背中を軽く叩いた。
「うん・・・」
佳耶は本当に強いね。
「・・・ねぇ佳耶。あたし、最後にお願いしたいことがあるんだけど、いいかなぁ・・・?」
「『ごめん』とかは、もういらないからね」
「・・・分かった」
もしかしたら甘ったれた考えなのかもしれない。
現実は、こんなに希望通りに進んでいくわけない。
でも、あたしの『ただの希望』だから。
望むくらいは、いいよね?



