「何でだろっ・・・断ればよかったのにね。あたし、何でセフレになっちゃったんだろ・・・」
・・・そう、断ればよかったんだ。
だけど、しなかった。
ううん、違う。
できなかった。
だって、神崎涼が・・・好きだったから・・・。
あたしも佳耶も・・・神崎涼が本気で好きだから。
「・・・あたし・・・佳耶の気持ち知ってたのに・・・・・・ごめんね。ホントごめん」
「いいよ、もう。南美が悪いんじゃない。・・・でも、あたしも1つ、聞いていい?」
「・・・うん」
「南美は・・・本気で、神崎涼が好きなんだよね?」
本気で好き。
じゃなきゃこんなに苦しい思いはしてない。
本気じゃなかったら、こんなに涙は流してない。
「・・・・・・ものっ凄く、大好き」
そのひと言に、神崎涼への嫌味を込める。
「・・・そっか」
佳耶は静かにうなずいた。
言ってよかったのかな。
これでよかったのかな。
だけど、心が凄く軽い。
胸にあった重たい思いが、胸につっかえていた黒いモヤモヤが。
全部外に出ていった。
いつから願っていたんだろう。
秘めている全ての気持ちが吐き出せたら、って。
そして、どれだけ楽になれるんだろうって。
そして今、例えようもなく、心が軽い。
だけど比例するように、鋭く、胸も痛む。



