「・・・初めて・・・・・・だから・・・」
神崎涼の顔が見れなくて、うつむきながら言う。
消え入りそうなあたしの声は、この部屋の沈黙に飲み込まれていった。
「・・・は?」
神崎涼の拍子抜けしたような声が聞こえる。
「・・・っだから!・・・初めてなのっ・・・ヤったこと、ないの・・・」
「・・・お前、まじで言ってる?」
アイスを食べ終えた神崎涼が、棒をゴミ箱に放り投げなげる。
カコン、という音がした後、
「・・・・・・超まじだよ・・・」
あたしはゆっくり首を縦に振った。
「・・・いいのかよ」
・・・今更そんなこと聞かないでよ。
そんな何でもないような言葉の中に、優しさを感じちゃうから。
そんな些細なことも嬉しいんだから。
これ以上、あたしの気持ちを大きくさせないで。
「・・・だって、好きなんだもん・・・」
あたしがそう言うと、神崎涼はフッと笑ってこっちに近づいてきた。
そしてあたしの隣に腰をおろし、
「じゃあ、何してもいいんだな?」
そう耳元で囁いた。
その言葉を聞いて赤面する。
「・・・な、何してもって・・・」
直後、神崎涼があたしの耳を噛んだ。
「・・・ひゃぁっ・・・」
初めての感覚に心も身体も飛び跳ねる。



