「何ボケっと突っ立ってんだよ。乗れ」
立ち尽くしていたあたしに向かってそう言う。
「え・・・の、乗る?どこに・・・?」
意味が分からない。
その場であたしが頑張って理解しようとしていると、神崎涼はズカズカとこっちにやって来た。
「早く来いっつってんだよ。こんなとこにずっといるとアイツ等に見つかっちまうだろうが」
『アイツ等』の部分で、顎を校舎の方にしゃくった。
そして吐き捨てるように言った後、乱暴にあたしの腕をつかんで引っ張った。
「えっ、わっ・・・ちょ、えぇっ・・・?」
いきなりのことに頭がまわらない。
言葉にならない言葉を口からこぼしつつ、神崎涼についていく。
・・・腕をつかまれてる。
そう分かるのに、たいして時間はかからなかった。
男の子に身体を触れられるなんて、いつぶりだろう。
考えると、改めてドキドキする。
肌から直接感じる神崎涼の体温は、夏なのにも関わらずそんなに熱くなくて。
なのに、つかまれたあたしの腕はどんどん熱を帯びていく。
前にもこんなことがあった気がする。
不思議な現象。
「おい、落ちて死ぬなよ」
神崎涼はバイクに乗りながらそう言う。
・・・・・・え、ちょっと待って。
ていうことは・・・。
「あたし、このバイクの後ろに乗るの?」



