誰もいない廊下には妙に不釣合いな存在。
廊下の壁に寄りかかってケータイをいじってる、人影。
あたしの存在に気付いたらしいソイツは首だけを動かして、こっちを向いた。
「・・・よぉ」
「・・・神崎涼・・・」
いつものようにドキドキと心臓が動く。
「・・・何してんの?」
・・・お腹が痛くなってよかった。
そんなことを思うあたしはやっぱりバカだ。
「見たまんま。ケータイいじってる。お前こそ何してんだよ」
「え、うん、ウロウロ・・・」
トイレ、とは恥ずかしくて言えなかった。
「ふーん・・・」
変な沈黙ができる。
・・・待って。
あたし、今がチャンスじゃないの?
でも、何て言えばいいの?
「・・・お前、いつまでここにいんの?」
その言葉に若干傷つく。
「ええ、だって教室つまんないんだもん・・・」
神崎涼の問いに全く答えてない、返事。
「まあ別にいいけど」
そんな些細な言葉で、さっきのショックが嘘のように消えていく。
神崎涼と距離を置いて、あたしも壁にもたれた。
廊下にいるのはあたしと神崎涼の2人。
言うなら今・・・。



