切恋~First Love~



廊下の窓から見える誰もいない中庭が、寂しさを感じさせる。


それが更にあたしの涙を誘った。


「南美ちゃん、帰ろっか。・・・・・・南美ちゃん?」


反応しないあたしを不思議そうに見ているであろう流菜ちゃん。


「・・・何か、夏なのに目が乾燥しちゃって・・・。ホント最悪・・・」


指で目をこすって、必死にごまかす。


「勉強のし過ぎなのかもねっ」


「うん、そうかも・・・」


今流菜ちゃんは本当に気付かなかったのか、それともあえて気付かないふりをしてくれたのか。


分からないけど、どっちにしてもあたしにとっては救いだった。




それから土日を除く毎日、学校に通った。


何度もサボろうと思ったけど、そうしたら先生が家に来て無理矢理連れ出されるんだとか。


それにあたしの場合、サボったらサボったで将来が心配になる。


でも神崎涼や尾崎君達は当然のことながら、毎日来るはずもなくて。


そのたびに先生達がプチ家庭訪問をしていた。


・・・そんなことをして、素直に従う奴らじゃないでしょ。


毎回のことながらそう思う。


でも尾崎君は神崎涼に比べたら穏やかな方だ、というのがあたしの感想。


隣の教室や校舎の下の方で、頻繁に神崎涼の怒鳴り声が聞こえた。


その中に女の声が混ざっていた日にはプリントどころじゃない。


神崎涼と意気投合して、一緒に先生に歯向かっているのだと考えるとイライラする。


・・・・・・これが、嫉妬?


どうしよもなく外が気になって、どうしようもなく教室を飛び出したくなる。


これが嫉妬なのだとしたら、この頃のあたしは嫉妬だらけだ。