「本当に何でもないのっ!!」


あたしはいきなり席を立った。


体が感情のままに動く。


「南美っ!?」


我慢していた涙が一気に溢れ出す。


目からポタポタとこぼれるそれは、机を元より深い茶色に染めてゆく。


2人の優しさを受け取ることができない自分が情けない。


こんな感情に振り回されてばかりの自分が悔しい。


佳耶や流菜ちゃんが、慌てふためいている。


神崎涼がポカンとあたしを見ている。


こんな状況の中、どうして教室にいれるだろう。


改めて自分の置かれた立場を考えたあたしは・・・。


教室を飛び出した。


相変わらず雫が流れ落ちる自分の目をこすりながら、ただ走った。


廊下にいる生徒達とすれ違うたびに、みんながあたしを見て振り返る。


そんなこと気にしてられなかった。


後ろから追いかけてくる佳耶と流菜ちゃんから、何としてでも逃げ切りたかった。


廊下で話していて、2人の行く手を阻んでくれた生徒達に感謝さえする思いだ。


なるべく人のいないところに行きたい。


無我夢中で訳もなく階段を上り下りし、最終的に保健室の前のトイレに駆け込んだ。


1番奥の洋式トイレのふたを閉めてそこに座るわけでもなく、ずっと立っていた。


立って、


「・・・うッ・・・ヒック・・・・・・っ・・・」


2時間目の間、ただ声を押し殺してずっと泣いていた。