「うわっ。もしかして南美ちゃんに当たっちゃった?今の」
ザワついている教室の向こうから、かすかに聞こえたその声。
頭を上げて、声のした方を向く。
あたしの頭に持ち主不明のペンケースをヒットさせたと思われるその人物は、笑顔を崩さずこっちに歩いてきた。
「・・・尾崎君のバカぁ~・・・」
相変わらず頭をなでながら、近づいてきた尾崎君に文句を吐く。
「いや、悪気はなかったよマジで。涼に借りてたからさー、返そうとして投げたらダメだった」
すると言い訳じみたことを言う、目の前の男。
罪を認めろ、罪を!
そして一応でいいから、形だけでも謝ってよ。
「・・・ひとまず謝ってよ」
この調子では謝ることはしないだろうと思い、自ら催促。
何、この虚しいパターン。
「ああ、ごめんごめん」
「絶対、反省してないでしょ」
後ろに座っている佳耶が眉を寄せる。
「ん?まあ気にすんなって。それより涼、お前早く紙出せよ」
佳耶のセリフを軽くスルーし、ふざけ口調で神崎涼にそう言った。
「まだ書いてねぇもん」
怪訝そうに返事をする神崎涼。
「バカじゃん、とっとと書けよ」
「誰かにペンとか全部貸してたから、まだ書いてなかったんだよなー」
それは明らかに棒読みで、そして尾崎君への嫌味がこもっていた。
「・・・・・・どうもすみません」



