「カズはここにいればいいよ」
「はい?」
さてどうしたもんかと腕を組むあたしにラディはサラリと一言。
「行く場所がないならここにいていいよ。ガラシィはここには入って来れないし、クルサもレイリャもやっては来ないから」
またよく分からない単語が出てきたけど、つまりはここにいてもいいよってことらしい。
「フミナリ族はこの森には滅多に入ってこないから、カズの安全は保障されている」
「………はあ、そうッスか」
ニコニコと綺麗な笑みを向けられてあたしはカクカクと頷くしかなかった。
「帰れるといっても今すぐは無理だろうしね。この世界のこともオレが教えられる限りは教えてあげる」
「それは助かりまする」
「だからカズもカズの世界のこと教えてよ」
「もちろん!」
あんな世界のことでいいならカズさん喜んで教えちゃう。
まあ、別に何を知ってるってワケじゃないんだけどさ。
「でも1つ厄介なことがあるな………」
「厄介?」
「うん。時々、ここに来るヤツがいるんだけどね。頑固っていうか、融通がきかないっていうか………」
「つまり、〈来訪者〉がいることを良しとしない人?」
「いや、そういうわけじゃない。ただオレがヒトと関わることを良しとしないんだ」
「なんと、ラディったら監禁でもされてんの?」
「似たようなものだね」
「なんだ、囚われの王子様ってちょっとおとぎ話みたい」
だいたいこういうときって悪い魔法使いが出てくるのよね。
ていうか、どうでもいいけどどうして悪い魔法使いってあんないかにも悪そうな顔してるんだろう。
全身黒づくめでさ、いかにも「わたし悪いです!」って感じの人。
あんなの一発で兵隊さんに見つかっちゃいそうじゃない?

