「ねぇ、ラディ」


「ん?」


「あたし、元の世界に帰れるの?」


「………帰れないことはないと思う」


「そっか。うん、ならいい」



やったね、憧れ…てもないけど異世界ライフ!


貴重な経験だしね!!



「ところで、ラディ」


「今度はなに?」


「いや、そんな大したことじゃないんだけどさ。あたし、どこで暮らせばいいんだろう?」


「へ?」


「いや、こっちに親戚がいるわけでも恋人がいるわけでもないし?居場所ないわけじゃん。あれかな、さっきのナントカっていう黒いのと仲良くなっとけば森の中でも生きていけるかな」


「いや、それは無理だと……」


「やっぱり?種族の違いは埋められないよねー。てか、ラディって人間?」



見た目は人間だけど、たとえば吸血鬼とか魔法使いとか?


そんなファンタジックな生き物なのかしら。



「いや、ミスカ族」


「は?」



みすか?


また意味の分からない名前が出てきましたねぇ。



「ヒトの言葉で言う魔法使いってヤツかな。ちょっと違うとこもあるけど」



あ、魔法使い。


それは納得。




「じゃ、空とか飛べちゃう?」


「空は飛べないなあ」


「あら、残念」


「でも瞬間移動はできるよ」


「それ、魔法というより超能力?」


「あぁ、そっか。人間はそういう位置づけか。うーん、ミスカの定義は難しいからなぁ、ちょっと説明しづらい」


「いや、いいよ別に。あたし、バカだし理解できるとは思えない」



おバカさんに異世界の知識が分かるわけがない。