「なら、あたし〈来訪者〉じゃないよ。あたし、目的なんてないもん」


「〈来訪者〉じゃない?」


「うん。変なコインを見つけて気付いたらここにいたの」


「コイン?」



訝しげなラディの問いにうん、と頷いてここへ来る原因となったコインの説明をする。




「金色でー、なんかバラに巻きつかれてユニコーンが彫られたるヤツー」




なんだかとっても不気味だった綺麗なもの。




「………それはこれか」



ラディがゴソゴソと戸棚を漁って取り出してきたのはキラキラと綺麗な装飾をされた小剣だった。



そしてその柄には……




「そう、これ」




あの禍々しい紋様。




「もしかして、あれもラディの持ち物?」


「いや、オレのじゃない。でもこの世界のものだよ」




忌々しそうに小剣を見てラディは投げるように戸棚にしまいこんだ。





「人間界に……あったのか」


「うん」


「そうか」



難しい顔をして考え込んでしまったラディ。




綺麗だなー、メチャクチャ美少年ー、とぼんやりと見つめながら自分の今の状況をもう一度考え直す。




コインを見つけた。

→知らない世界へ。

→ナントカ(なんだっけ?)っていうらしい黒いモノに追いかけられた。

→ラディの家に逃げ込んだ。



こんなとこ?



うん、まとめてみるとあんま大した出来事はないな。



ここが異世界ってとこを抜かしては。