「生まれつきよ、生まれつきー。そんなに珍しいならよかった~。あたし、この真っ黒な髪嫌いだったんだよねー。まさかの希少価値」
染めたいなぁ、とは思ってたけどタイミングを逃したというか。
染めたいなぁ、と思ってるだけで時間が過ぎていったというか。
「嫌い?せっかく綺麗な色をしているのに」
サラリ、とあたしの髪をひと房とってラディが髪に唇を落とした……ってラディ!?
「文化の違いって言っても、限度ってもんがあるってば!!え、なに、それ挨拶?まさかの新手の挨拶?アメリカでハグするのと同じ感覚?!」
パニくるあたしにどうしたの?なんてラディは呑気なもの。
「ななななっ」
「うん?」
「うぁっ」
ダメだ、コイツに太刀打ちできるほどあたしの容姿は優れていない。
髪にとはいえ、キスされたなんて一生の宝にできそうだ。
ううっ、と悔しさに頭を抱えるあたしをラディはおもしろそうに見ている。
「カズは表情が豊かだね」
「そうですかい」
「うん。見てて楽しい」
クスクスと笑みを零すラディ。
君はなんだい、見てるだけで癒されるね。
「………おしゃ、ラディ。あたしも質問いい?」
うだうだと考えるのをやめ、ビシッと人差し指を立てた。
「質問?どうぞ?」
「まず1つめね。ここ、どこ?」
森の中に黒い魔物がいる世界。
魔界?
天界?
妖精界?
いったいどんな世界?

