「爽!!キャッチボールしようぜっ」


学校に戻って片付けがほぼ終わった頃、渉さんから声がかかった。


「え…?」


「何だよ。先輩の言うこと聞けねぇの?」


驚いてマヌケな声を出した俺に、渉さんはいつも通り睨みをきかす。


「や、いや…お願いしますっ」


「おっしゃ!!」


笑顔になって、グラウンドに走り出す渉さん。

こうやって渉さんとキャッチボールすることも、なくなんのかな…?




「爽?お前ボールに力ねぇな」


二、三球投げて止まった渉さん。


「お前は元気だけが取り柄なんだから、バンバン投げろよ」


ニッて笑うその顔は、いつもとちっとも変わらない。


試合に負けて、辛くて苦しくて……

でも悔いがないから、笑顔でいられんのかな?


そーいうのってカッコイイよな。

俺も笑って引退できるかな?