【長】野球ボール〜ソウソウの夏〜

「……まじで愛衣だけなんだ。こんな気持ち俺初めてで、怖いぐらいに愛してる」


「あたしも爽だけだよ」


抱きしめた腕の力さえも、強くないかって不安になる。

でも優しくすることもできない。

離したくないって思っただけで、普通が分かんねーの。


「愛衣…」


クイッと顎を持ち上げて、ゆっくり顔を傾ける。

そっと目を閉じた愛衣の顔は、何よりも俺のドキドキを強くする。

唇が重なる正にその瞬間。




「すみませーん!!」


元気な少年の声が響いた。

そして足元には、一球の野球ボール。


コルァー少年!!空気読め!!と心では思っても、野球少年に冷たくできるはずもなく。


「ほらっ」


ボールを拾って、少年に投げ返した。


これで立ち去ってくれることを願ったのに……


「もしかして、大村選手!?」


どう見ても小学校低学年。

キラキラした目で近付いてきた。