【長】野球ボール〜ソウソウの夏〜

バッと勢いよく振り返ると、そこに励ちゃんが立っていた。


「今日だけは、誰にもマウンドを譲るつもりありません」


いつもは口数の少ない励ちゃんが、珍しくハッキリと意志を示した。


「励…」


「励ちゃん…」


監督と俺は、思わず目を見合わせた。




「まだ投げれます!!」


真剣な励ちゃんの姿を見て、顔が緩む。

それは、素直にうれしかったから。


「俺からもお願いします!!」


俺も励ちゃんの隣で頭を下げた。

今のこの状況で、励ちゃん以外の投手は考えられない!!


「……分かった。励頼んだぞ!!」


監督が軽く励ちゃんの左肩を叩いた。

それは俺らのやる気のスイッチが、再び入った瞬間でもあった。