【長】野球ボール〜ソウソウの夏〜

「今の言葉だけ、偶然聞こえた」


「爽……本気なの?」


じっと俺を見つめる励ちゃんの目にも、心配と不安の色が浮かんでる。

でも俺は一切迷うことなく、素直な気持ちを声にした。


「俺は本気。ずっと一輝とキョンキョンの様子見てたし、うまくいって欲しいって確かに思ってた」


それは嘘じゃないし、100%真実。

だけど……


「でも気付いた。俺、いつの間にかキョンキョン好きになってた。一途に想ってるとことか、マネージャーがんばってるとことか…全部好き」


真っ直ぐキョンキョンの目を見ながら言った。

けど、真っ赤な顔になって反らされた。


俺の想い、届いた?




「……そっか。だって、叶夏ちゃん」


励ちゃんがいつものように微笑むと、キョンキョンも口をパクパクさせる。


「え……えっと」


何か言いかけたキョンキョンの言葉を俺が遮る。

今のキョンキョンから出る言葉に、興味はない。


「まだ断らないでよ♪YES以外の言葉聞く気ねぇし。俺なりにやらしてもらうから」


一輝に負ける気なんてさらさらない。

俺は俺らしく、キョンキョンを笑顔にしてみせる。