「申し訳ございません!大丈夫ですか?」


顔を上げると、そこには黒いバンダナをまいた色黒のお兄さんがいた。

バンダナに店名が書いてある。



「あの…」


話そうとした瞬間、あたしはお兄さんの手に

「CLOSE」

の札を見つけた。


「もう閉店…なんですね」

「ええ。何かご用で…?」

「いえ、いいんです。」


親切そうなお兄さんが店内に戻っていった後、あたしは店の前の階段に座り込んでしまった。



間に合わなかった。


あんなに走ったのに…。

もしかしたら武絋はもう可愛い、素敵な子を見つけて今頃二次会でカラオケなんか行ってたりして…

いやでもあの男がカラオケもないか…


と取り留めのないことを意気消沈した頭で考えていた。