瞳から大粒の涙がこぼれおちる。


その場にしゃがみこんだ。


「未穂!」


『?美沙?』


「どうしたの?!とりあえず、こっち」


美沙と入ったのはカラオケボックス。


「何かあったの?」


『グスッ。アタシ、自分がわからないよ・・』


アタシはつっかえながら、美沙に全てを話した。


「・・未穂は木下が好きなんじゃないの?」


『え?』


「山崎サンよりも、木下のことが好きなんじゃないの?」


『そんなことないよ。アタシは・・』


「じゃあなんで木下の告白を断れないの?」


言い返せなかった。


『わからない・・』


「木下は突き放せないのに、彼氏は突き放した。もう答えは出てんじゃん」


『でも』


「体は素直みたいだし」


確かに、体が勝手にやっていた。


気づいたら突き放していた。


もしかしたら、あのとき咲いた花は枯れてしまったのかもしれない。


アタシは水やりを忘れてしまったのかもしれない。


ほかの種に水をやってしまったから。


もうアタシの視界に辰也はいなかったのかもしれない。


健人しか見えていなかったのかもしれない。