誰よりも早苗をイラつかせていたのは、夫の徹だった。


仕事で疲れているせいなのか、家に帰ってきても口数は少なく、広幸の受験のことで早苗が相談しても、リアクションは無いに等しかった。


「ごめん。その話、明日でいい?」

そう言って、ベッドに入ってしまう。



確かに最近仕事から帰ってくるのも遅く、出張などでほとんど休みも無い。

疲れているのかも知れないが、もう少し話を聞いて欲しかった。



だが、早苗をイライラさせている原因はそれだけじゃなかった。


疲れている徹は先にベッドに入って眠ってしまう。


たまに早苗がベッドのなかでイタズラをしても、反応は無い。