「相変わらずお綺麗ですなぁ〜、中村さん。」



僕は夏休みに入って、部屋の整理整頓に努めていたが、そんな僕の部屋を見て友人の神谷昇は、独特な口癖で言った。



僕は中村健太という名前なのだが、昇は唯一僕のことを「中村さん」と呼ぶ。



「そりゃどうも。さぁやっちゃおうぜ。」



大学の夏休みはながい。



とはいえそれも9月の半ばになればもう佳境。



課題を遂行しなければならない。



しかしまぁ課題といっても、ゆとり教育が叫ばれているからか、僕が通っているのが中堅国公立大学だからかはわからないが、大した量ではない。



早いとこ片付けて夜は酒だ。



健全な大学生なら10人が10人そうするだろう。



案の定



3時半から、2時間僕の部屋に響いていた、鉛筆の音や「あーだこーだ」という議論の声は、5時半には消えていた。