それはそれは綺麗だった。
「うん…」
隣で薔薇に見とれる先輩の横顔を見た。
…こっちも綺麗………。
まさか、王子先輩がヴァンパイアだなんてね。
それ以上に、その事実をあっさりと受け入れられる自分が怖い………
だって、ヴァンパイアって吸血鬼じゃない。
あたし、よく小さい頃にドラキュラの映画見て大泣きしてたの覚えてる。
その時、泣きわめくあたしにお父さんが言った。
「よしよし。
大丈夫だからな。
ドラキュラなんて怖い生き物、この世に存在しないんだから」
幼いあたしの頭を撫でながら、あやすように言ったお父さんにあたしは言い返した。
「お父さん…、違うの。
楓ね、ドラキュラが怖いんじゃないの。
この人、可哀想だよ。
きっと独りぼっちだから寂しいんだよ」
そんなあたしの言葉を聞いて、お父さんが目を丸くして絶句した。
…そりゃそうだよね。
今思えばそうだよ。
幼稚園児だったあたしが、人の生き血を飲むドラキュラを恐れるどころか同情してるんだから。
さらさらおかしな話でしょ?

