善くも悪くも
…ありえない………。
「ヴァンパイアって…、人の血吸うんですよね?」
「吸うよ。
僕は滅多に吸わないけどね」
吸わないんだ…。
じゃあ普段はどうやって生活してんだろ。
「吸わない時はどうするんですか?」
「ヴァンパイアの世界もねー、最近人間界で生きてくのが大変なもんだからさ。
いろんな栄養剤みたいなの、あるんだ。
そんなのよく利用してるかな」
先輩が制服のポケットから出して見せてくれた。
「綺麗………」
ビー玉みたいなサイズの、小さな青いボール。
色が澄んでて、宝石みたいで本当に綺麗。
「ほんとは人間界にいる僕が持つべきものじゃないんだけどね。
この世界はヴァンパイアにとっての餌場なわけだから」
「…なんで先輩は血を吸わないんですか?」
「好きな人がいるから。
むやみに好きでもない人の血を吸っても美味しくないんだ」
へぇ…。
ちゃんと血にも味とかあるんだ。
しかも、その人に抱く感情によって味が変わる…って、面白い。
「先輩が美しいのは…、ヴァンパイアだから?」

