適当にかけてと言われましても…
どこに座ろうか、迷ってしまう。
とりあえず、先輩のテーブルを挟んで向かいの席に座った。
「紅茶でも飲む?
それとも、コーヒーかな?」
先輩がアンティークなポットを持ちながら、聞いてきた。
ダメですよぉぉぉ!!!
そんなお高そうなポット持ってよそ見しちゃ!
落としちゃいますよ!!!
…なんて、言えるはずもなく。
「あ…、じゃあ紅茶で………」
と、紅茶をオーダー。
…実は、コーヒー飲めませんから。
「紅茶、好きなんだ?」
「まぁ…」
「僕も好きだなぁ…
特にこの香りがね」
こっちを見てにっこり微笑んだ。
もうこの世のものとは思えないほど、綺麗な顔で…。
「せっ…先輩はご家族と住んでるんですか?」
「ううん。
わけあってひとり暮らし」
「そうですか…」
話題を変えたつもりが、一瞬で終わってしまった。
何やってんだ、あたし!!!
「独りも気楽なもんだよ。
何もないからね…」
…その時、一瞬だけ………
先輩がすごく冷たい目をした。

