一四歳。

心も体も、目まぐるしく成長する激動の時代。


目にうつるものすべてが新鮮で、毎日あたらしい発見があり、怒涛のように押しよせてはあっという間に過ぎ去っていく濃密な時間。

はるか昔のようにも思えるし、ついこの間のようにも思える。


円城寺くんは当時からすでに一目置かれる存在で、クラスの女の子たちの、いや、学校中の女の子たちからチヤホヤされていた。

容姿端麗、文武両道、そのうえ円城寺財閥の御曹司ともくれば、それはもうチヤホヤされないわけはない。

完璧すぎて近よりがたいという子もいたくらいだ。


異性を意識しはじめる年ごろなだけに、誰と誰がつきあっているだとか、誰が誰にふられただとか、誰と誰がヤっただとか、持ちあがる話題と言えばそんなものばかり。

その手の色恋ざたにほとんど興味がなかったわたしも、まわりからの影響と、持ちまえの人並はずれた好奇心とが手伝って、彼氏をつくりたいという気持ちが芽生えてくる。


そして、誰を彼氏にしたいかと考えたとき、円城寺くんしか思い浮かばなかった。


ある日の放課後、わたしは校舎裏の中庭に彼を呼びだした。


「どうしたの小松さん」


さっそうとあらわれた円城寺くんは、八月の猛暑だというのに汗ひとつかいていない。


「僕に用があるって?」

「うん」


これから告白されるということに感づいている様子はなさそうだった。


「あのさ、円城寺くんってつきあってる子いるの?」

「べつに、いないけど」

「ふーん……そうなんだ」


神妙にうなずきながら、わたしは意味もなく杉の木の周りをクルリと回り、それから彼の正面に立った。