リビングから音楽が聴こえる。


ボヘミア風奇想曲だ。


スヴェトラーノフは右手を振りかざし、銀髪を振り乱しながら頻りにオーケストラを煽動している。


陽気なメロディ、小気味よいテンポ、華やかで奔放な管弦楽曲。


しかし何故だろう。


これほどまでに僕の不安を煽るのは。


女は僕の☆☆☆をつまみ、ハサミをあてがった。


「そうそう、円城寺くんに一つ質問です」


逆光で女の顔が見えない。





「小松千世子って子、覚えてる?」


「……知らん」





パツンッ。





(了)