僕は立ち上がろうとした。


が、脚は全くいうことをきかなかった。

上体を起こそうにも、腕に力が入らない。


気を抜くと、意識が遠のいていきそうになる。


「でもさ、ビックリしちゃったよ」


目だけを動かし、女を見た。


「円城寺くんも、わたしと同じだったんだね。やっぱり運命の人だよ」


なおも要領を得ない話を続けながら、女は水槽の中を眺めている。


「わたしもね、ちょっとしたコレクターなんだよねぇ。だから円城寺くんの気持ち、よくわかるよ」


女は傍らに屈み込むと、腹這いになった僕の体をひっくり返して、仰向けにした。


不自然に形の整った乳房が目に入り、思い出したように忌々しさが込み上げてくる。


女は、肩にぶら下げたポーチの中に手を突っ込んだ。


「好きな人の一部を切り取ってぇ、自分のそばに置いておきたいっていう気持ち、すごくよくわかるよ」


女がポーチから手を引き抜くと、やたらと大きなハサミが握られていた。


ブラックライトの青い光を受け、二枚の刃が鈍く光った。


「円城寺くんの“モノ”はどうしても欲しかったんだ……。だって初恋の人だもんっ」


何を言っているのか。


頭のいかれた女なのかもしれない。


「色んな男の子からたくさんゲットしたけど、円城寺くんの“モノ”はわたしにとって特別だから」