「ごちそうさまっ。こんなにおいしいチーズケーキ食べたの生まれて初めてだよ」

「まだあるけど、食べる?」

「うーん、もうお腹いっぱい」


わたしは断腸の思いでチーズケーキの誘惑を打ち払った。

合コンのときから飲みっぱなし、食べっぱなしだったこともあって、下腹がぽっこりと膨らみはじめている。

ここらでセーブしておかないとまずい。


なにしろこのあと、夢にまでみた大人の時間がやってくるのだから。


「シャワー浴びようか」


なんの前触れもなく彼が言った。

それまでの会話の流れから脈絡がなさすぎる。

少しずつそういう雰囲気にもっていくのだろうと踏んでいたわたしは、意表をつかれて少しうろたえてしまった。


「えっと……シャワー?」

「うん。暑かったし、けっこう汗かいたでしょ? 一緒にシャワー浴びよう」


ファーストフード店でポテトを注文するくらいの気軽さで、円城寺くんは言ってのけた。

予想外のストレートな攻め方に、わたしの心拍数は急上昇していた。

当然、この時間に男と女がふたりきりでいるのだから、そうなるのは自然な成り行きだし、わたしもそのつもりでここに来ているし、スケスケヒラヒラの勝負パンツもちゃんとはいてきているし――


「ユリカちゃんの裸が見たいんだ」


ずきゅーん、という音がどこかから聞こえた。


「円城寺くんって、けっこう大胆なんだね? あはは……」


彼はソファからゆっくりと立ちあがり、わたしの座っている側へ近づいてきた。


心臓がものすごいペースで早鐘を打っている。


円城寺くんはなにも言わず、ひざ元にあるわたしの手を握った。


そして、そのまま彼に手を引かれ、ふたりでリビングを出た。