唐突に、「ドン」という地響きのような音が聞こえた。


「わ……今のなに?」


音は外から聞こえたようで、わたしはガラス戸の向こうに目を凝らした。


もう一度、「ドン」という大きな音がしたかと思うと、おどろくほど近くの空に花火が見えた。


「花火やってるよ!」


わたしは弾かれたようにソファから立ちあがり、ガラス戸を開けてテラスにおどり出た。


眼下に見える丘の向こう側から、次々と花火が打ちあがる。


「うわー、きれい」

「毎年、海岸で花火大会があるんだよ。近場の人間しか集まらないささやかなものだけどね」


テラスに出てきた円城寺くんと、ふたり並んで手すりによりかかる。


「すごーい」


黄、赤、青、緑、紫。

夜空の黒いキャンバスが鮮やかに彩られてゆく。

大輪の花が空一面にぱっと広がり、光のしずくが落ちていく間をぬって、また次の花火が尾を引いて空に舞いあがる。


ムっとする暑さもなんのその、まるで神様が用意してくれたような絶好のシチュエーションに、わたしはますますうっとりとした気持ちになった。


今こそわたしを落とすタイミングじゃないだろうかと、横目でちらりと円城寺くんを見た。


彼は横目でわたしの胸をのぞきこんでいた。