「そうそう、その調子。」
クスクスと鈴のように笑う砂名と砂希を、女将が迎えにきた。
「用意はできた?あら砂希、ずいぶんと見違えたじゃない」
驚いた様子で砂希を頭のてっぺんからつま先まで眺め、満足したように微笑んだ。
「いつでも出れますよ。」
「良かった。そろそろお見えになるから、一緒に表まできてちょうだい」
はい、とふたつ返事をし、女将を先頭に、砂名、砂希と続いて玄関まで足を早めた。
表には、今日もたくさんの人が行き交っている。
そこにスーツを着た、スラリとと背の高い男性と、小柄で小太りな男が店のほうへやってきた。
「ようこそおいでやす。」
恭しくお辞儀をする女将に続き、砂名もお辞儀をした。それを真似するように、砂希も慌ててお辞儀をした。
「ほう、また見事な女郎ですね」
小柄な男性が砂名を見て口を開いた。
「こちらは月光麗蘭で人気が一番の砂月です。隣は名月(ナツキ)と申します。砂月、こちらは六条幾斗様(ロクジョウイクト)と、濱野夕様(ハマノユウ)。」
急に名月と呼ばれ、戸惑った砂希だが、それが自分の源氏名だと、砂名に耳元で教えて貰った。
互いに名を交わし、一同は座敷へ向かった。

