まだ信じられないような面もちでいる砂希をよそ目に、砂名はすっと立ち上がり、タンスから小さめな、また鮮やかな着物を取りだした。
砂希、と呼ぶと、ハッとし、慌てて砂名のほうを向いた。
こっちへいらっしゃいと、手招く砂名のもとへ近づいた。
「初めてのお座敷使えなんだから、きちんとした格好をしないとね。」
そう言って持ちだした着物を砂希に羽織らせた。
「綺麗な着物……。」
「私のよ。」
えっと砂名の顔を見ると、懐かしそうに袖を触った。
「砂希には少し大きいわね。まあどうにかなるかしら。さ、早く脱いで」
「え、ねぇさまのお着物なのにあたしが着るなんておこがましくてできませんっ」
そう言い張る砂希を目をまるくして砂名は見やった。
「あら、この子は私の夢を潰す気なのかしら。」
「ねぇさまの、夢…?」
「そうよ。いつか、私の側仕えがお客様に初めてお目通り叶うときに、絶対私の初めてお目通しされたときの着物を着せるんだってずっと夢見てきたのに」
今度は砂希が目をまるくする番だった。

