女将もここらの女郎屋じゃ有名な女郎だったそうだ。当時の気品や色っぽさが今もなお漂ってて、一向に老いる気配がない。
「砂名、今日は大切なお客様がお見えになるの。一段とおめかししてちょうだい。」
はい、と返事をする砂名を確認し、次に砂希を見やった。
「砂希、おまえもだよ。」
さすがにこれには砂名も砂希も驚いた。
「え…あたしも……?」
半信半疑で女将の顔を見やる。
「悪いけど、本当に大切なお客様なの。人手が足りなくてね。まだ子供だけどおまえなら化粧しだいですこしはごまかせるだろうし。酒の席だけ出てちょうだい。」
「わ、わかりました…。」
緊張した面もちで返事をした砂希に安心したようすで女将は部屋をあとにした。

