―月光麗蘭―



ここの女郎屋で一番を誇る女郎、砂名(サナ)は、今夜もまた自分の部屋で化粧を始めた。



側仕えの砂希(サキ)が慌ただしく部屋を行ったり来たりしている。



そんな砂希を鏡越しに、微笑ましく思いながらも、そんなことは表情には出さず、砂名が窘める。



「砂希、おまえいくつになったの?少しは落ちつきなさいな」



するとピタッと砂希は動きを止め、少しムッとし、砂名のほうを向いた。



「13です。だって砂名ねぇさまが面倒くさがってお着物を選ばないんですもん。あたしがパタパタしなきゃ、準備が整いません。」



「それがおまえの仕事でしょう?私だっておまえくらいの年にはねぇさまたちの準備を整えていたけど、そこまで落ちつきがない子じゃなかったわ」



チラッと砂希に目線をはしらせると、砂希は可愛らしい唇を尖らせ、砂名の後ろに座った。