お座敷にはたくさんの料理とお酒が用意されていた。
「それでは私はこれで。ごゆるりと」
女将はするするとご座敷の襖を閉めて去った。
「砂月といったな」
「はい」
じっと庵に見つめられる。品定めするようにというより、まるで愛しいものを見るように。
整った顔に漆黒の瞳と、あまりにも綺麗な彼に見つめられ、砂名は内心戸惑いながら、幾斗を観察していた。
「おまえ、この仕事をやってどれくらいになる」
「そうですね…来春で三年目です」
そうか、と言うと、杯を砂名の前に突き出した。
意図に従うように杯に並々と酒を注ぐ。
砂希も夕にどうぞ、と進めた。
夜も更け、気づけば空には丸い月。夜空には星が幾万も輝いていた。
ご座敷の料理とお酒も底をつき始めたころ、夕が立ち上がった。
「私はこれで。明日も早いですから」
「あら残念…、名月、玄関までお見送りなさって。あぁ、女将さんも呼んできてちょうだい」
はいと返事をし、スッと立ち上がった。

