ベランダに出て、柵に手をかけて遠くを見つめた。
突き刺すような冷たい風が体をすり抜けて行く。
暗闇の中に浮かぶ街灯の光。
遠くの方から海の波の音が聞こえてくる。
「雪来?」
葵さんがベランダに出て来た。
泣いてるのがバレないように手の甲で涙を拭った。
「雪来?どうした?」
葵さんが隣に立つ。
手には携帯灰皿とタバコ。
タバコの箱からタバコを1本取り出すと、口に咥えて火をつけた。
タバコの煙が風に乗って、暗闇へと消えていく。
「雪来?泣いてた?」
「や、やだなぁ……。泣いてなんかないよ?」
私はそう言うと、葵さんから離れて、スノードロップが植えてある鉢植えの前にしゃがんだ。



