「じゃー、行って来るね」
「あぁ……行ってらっしゃい」
玄関を開けて、出ようとした時、葵さんに腕を引っ張られた。
その勢いで、葵さんの胸に飛び込む。
私の体をギュッと抱きしめる葵さん。
「雪来……」
耳元で私の名前を呟く。
「葵さん?」
「雪来……好きだよ……」
抱きしめる腕に更に力が入る。
「葵さん……私……行かなきゃ……」
「あ、ゴメン……」
葵さんはそう言って、私の体をそっと離した。
そして、私の唇に軽くキスを落とす。
「じゃあ……」
「う、うん……。行って来るね……」
私は玄関を開けて、外に出た。
"パタン"
玄関が閉まる音がした。
バイトが終わって帰って来たら
いつものように「おかえり」と
笑顔で迎えてくれる葵さんがいる。
この時、私は
そう信じていたんだ――。



