「遅いよ、冥ちゃん」

人の気配を全く感じなかった──。
こんな俺ですら、ただ者ではないことくらいはすぐに悟った。

「永倉先輩!」

冥は声の正体を確認するとそう声を上げた。どうやら彼女の知り合いのようだ。

「お隣りさんは?冥ちゃんの新しいオトコ?」

「なっ、何言ってるんですか!違いますよ!変な誤解しないで下さい!」

数時間前に知り合ったばかりなのに、そんなこと言われて否定しない奴はいない。

カメラを首から下げて現れた男性は、俺に視線を合わせた。
こういう時は目を逸らさない方がいいことくらいは、俺も心得ているつもりだ。

「君、名前は?」


「沖田総太……です」


「なるほど。君が隊長の言ってた仲間ってやつだね」

それを聞いて安心したのか、男の表情が緩んだ。

「僕は永倉新輔(ながくらしんすけ)、よろしく」

「……こちらこそ」

俺たちは軽く、握手を交わしたのだった。