まだ俺には知らないことがたくさんありすぎる。

組織のこと、メンバーのこと、

そして……、


あの謎の声と超能力のこと。


俺にそんな力があったなんてな、親に言ったらきっと腰を抜かすだろう。



とにかく!俺には知る権利がある。ここに足を踏み入れてしまった以上は、全てを明らかにするまではここに居てやる……そんなことを思っていた。



「着いたわよ」

考え事をしている時は時間の流れを早く感じるらしい。

「ここは……?」

今は使われていない、廃墟ビルの前。
辺りはとても閑散としていて、どことなく寂しい。大通りから一つ路地を進み、突き当たったところにそれは佇む。
あいにく、人影は俺たち以外には見当たらない。

「奴らのアジト……って言ってもまだ総ちゃんには分からないだろうけど」

奴ら……?

「そーいや、例の調査についてもまだ詳しく聞いてなかったな」

俺としては勝手に連れて来られたって感じだ。

「総ちゃん、鬼瓦文蔵(おにがわらぶんぞう)って知ってる?」

「鬼瓦……文蔵?」

テレビのニュースで聞いたことがあったような。
確か──金持ちのおっさんだったっけ。

「名前なら聞いたことはあるハズよ。表の顔は日本の政界をも左右する、財閥のトップ。しかし奴の裏の顔は、闇に蔓延る悪党」

「なるほどな、まぁあんだけの金を維持するにはそれなりの理由があるってわけか」

「そういうこと、今回の調査は奴が麻薬や拳銃を密輸して日本に持ち込んでいる証拠を押さえるの」

しかし俺は彼女の言う「証拠」を捕らえるために必要な、あるモノがないことに気付く。

「でも俺たちカメラ持ってないぜ」

「大丈夫、強力な助っ人が先に来ているハズだから」

もう一人、俺たちみたいに超能力が使える奴がいるのか?!