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「あんたって意外に役に立たないのね」

無言の沈黙がどれくらい続いただろうか。
少なくとも五分はあったと思う。
それを打ち破る一言がコレだ。

「悪かったな、ご期待に添えなくて」

俺はできる限りの皮肉を込めて反論してやった。
しかも、同じ歳(多分)くらいなのに、やたらと俺よりも上目線的な感じが非常に気になる。
まぁ、女の運転するバイクに乗って、彼女の背中に捕まっている俺も俺だが。

『変なところ触ったら叩き落とすからね!』

そう忠告を受けている以上、この今ある手の位置も、力加減もをずらすわけにはいかないのだ。

けたたましい音とヘルメットに遮られて、俺の反論も虚しく響く。
そんな事もおかまいなしに言葉を続けた。

「あのさ――、お前やけに俺に対して偉そうじゃねぇか?」


「何?聞こえない!」

無理もない、この状況じゃな。
とりあえず赤信号で止まるまで会話はお預けだ。




キキッ------ッ



やっと赤信号に引っかかった。


「あのさ、お前って何歳?」
停止時間もあまり無いため、さっきよりも端的な質問に変えてみた。

「二十一だけど」

俺よりも歳上だったか……。

「別に呼び捨てでいいよ、みんなそう呼んでるから」

「?」

「名前よ、名前。冥でいいから。ねっ!総ちゃん」

総……ちゃん――?!

彼女は俺が歳下というのが分かったいたのか、それとも俺が子供に見えたのか……。
話の流れからすると後者な気がする。(汗)


俺たちは”調査”とやらに向かうため、ひたすらバイクで走り続けた。