この建物には本当に誰もいないのだろうか。
いくら廃墟したビルと言えど、誰もいないという保証はない。
よくよく見ると、ビルの壁にはところどころにヒビが入っている。
今にも崩れてしまいそうな……まさにそんな表現が相応しい。
俺たち三人は周りを何度も確認すると、その廃墟中へとゆっくり近づくことにした。



「おばけが出てもおかしくない状況よね」

いつもは気丈な冥も今は声が震えている。薄暗い闇は果たしてどこに続いているのだろうか──。

「さっきは入口付近だけだったし。どうせなら地下に行ってみる?」

「……永倉先輩、やけに楽しそうですね」

「そうかなぁ。気のせいじゃない」

俺は思った。きっと彼は、写真が撮れる喜びしか頭にないんじゃないかと。

特に行くあてもなくさ迷い続ける俺たちは、地下へ下る階段を見つけ、降りて行くことにした。

──おばけに会いませんように。
そう願いながら……。



「あれかしら?」

階段を降りた先には部屋が一つだけあるのが見える。薄気味悪さは相変わらずだ。

扉にはカギがかかっており、物事は簡単にはいかないということを改めて実感したのだった。

「残念だなぁ、せっかく……決定的な写真が撮れるチャンスだったのに」

「何事も思い通りにはいかないってことですよ。冥、そろそろ……」

引き返そうか、と言おうとした時、



「そこまでだ、怪しい侵入者!」

暗闇から男の声とカチャという銃口を向けられている音がする。
俺たちは何者かに見つかってしまった。

やっぱり物事は思い通りにならない──らしい。