その顔を見て、私はどうしようもなく苦しくなってしまって。
「…っわかりました。変なこと聞いてごめんなさい。 ―さようなら」
私は部屋を出た。
胸が苦しくて、上手く息が出来ない。
今のは、優しさのつもり?
はっきり言わない方が、優しいと思ってるのかな?
―分かってない。
逆に私に深く突き刺さる。
大嫌いって、言われた方が何倍楽かな…。
あんな顔されて、堪えられるはずない。
苦しくて苦しくて…。
私にとってのこの結婚は、
大好きな人と結婚出来る、
夢みたいなことだった。
だけど、香夜さんにとっては、
好きでもない人と
結婚「させられる」
ただの政略結婚 だったんだ。
「―っく…」
悲しくて苦しくて、耐えられそうにない。
私を好きじゃないことなんて、わかっていたのに。
香夜さんをずっと、縛りつけてしまっていたんだ…。
この苦しみは今まで逃げて来た罰なのかもしれない。
「ごめ…なさっ…香夜さんっ…」
この気持ちは、他の人が婚約者になれば消えるものかな?
「…っ決めた。」
次は絶対、私を女として見てくれる人を好きになる…

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