「いいえ。本気です。やっぱり私じゃ…。私じゃ、だめなんですか?」
前から思っていたこと。
私はずっと香夜さんが好きで。
許嫁なんて名ばかりで。
婚約者のはずなのに、距離は全然遠くて。
普通に話すし、避けられてるとかじゃないの。
ただ、何か見えない壁を作られている気がしてた。
私には、触れてくれないのに、他の女の人たちとは遊んでいて…。
なんだ、女の人には興味あるのね、なんて。
興味がないのは…。
―本当は、お父様が言いたいこともよくわかってるの。
見ないふりしてきただけで。
そろそろ気付きなさいってことよね?
私が相手にされていないことに…。
覚悟をしなさいってことでしょう?
「香夜さん…」
黙って私を見ているから、私から声をかけた。
今まで見たこともないような、真剣な顔をしてる香夜さんに、嫌な予感がする。
「―未緒、ごめん。」
ごめん?
いや。何も言わないで。
「…君のこと、そういう風には見れないんだ…」

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