*香夜*
「香夜様!婚約を…解消なさったとは本当ですか?」
執事の川瀬が驚いて聞いてくる。
「あぁ…情報が早いね。本当だよ」
「何故、急に…!」
「急にじゃない。前から考えていたことだ。
未緒には、もっといい人がいる」
「しかし、未緒様は本当に…」
必死に説得してくる川瀬。
「もういいんだ。あいつだって、意地になってたんだよ。無理に俺にしなくてもいいのに…」
「香夜様…。それは、違うのでは…」
「あいつには、本当に酷いことをした…。これからはちゃんと幸せになってもらいたいしね。」
こんな、俺なんかの婚約者になってしまったばっかりに…。
俺は、あいつを悲しませたくない。
小さい頃からずっと一緒で、それが当たり前だった。
気付けば未緒はすごく綺麗になっていて、俺が触れたら壊れてしまいそうで…
早く離れてもらいたくて、色んな人に手を出していた。なのに、なかなか離れてくれなくて…。
未緒なら、いくらでも相手はいるはずなのに。
そこで川瀬が、小声で話しかけてくる。

![うらはらっ! [短編]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.784/img/book/genre1.png)