「あの、みどりくん…?」
急に離れた彼に一歩近づき、ブレザーの裾を掴もうとしたけど。
「金曜日、ホームルーム終わったら昇降口」
伸ばした手が彼に届くことは、なくて。
そのまま踵を返して本家へ戻って行く彼の背中を、見つめることしかできなくて。
行き場をなくした右手が虚しい。
……でもそれ以上に、身体が熱い。
「どうしよう……」
こんなんで金曜日大丈夫なのかな。
峰さんの家は遠いし、二人きりになる時間は必然と長くなる。
あれ?そういえば……峰さんは隣の市だけど、家の場所の関係で行くのにはかなり時間がかかる。
帰りって何時頃になるんだろう。
……まあ、終電を逃がさなければいいんだよね。
うん、と一人頷き止めていた足を動かす。
フイに触れた右頬は、尋常じゃないくらい熱かった。

