そんな、時


「柚」


――耳元にかかる吐息。


髪を耳にかけていたせいで耳が露わになり、びくっと身体が震えた。

身体の中に電流が走る。

プラス、何ヶ月ぶりに呼ばれた名前が更に私に刺激を与えた。


……だめ、なんかおかしい。

正常心を保てない。今にも意識が途切れそう。



「あのさ、」

「っあ、やめ……っ」



それは、自分でも吃驚するほどだった。


私じゃない甘い声が自然と唇から出ていて。

出した途端、何が何だか分からなくなってしまって。

我に返ったのは、ばっと翠君が私を引き離したから、だった。



「……ご、ごめ、んなさい…」



何を、と訊き返されても答えられない。

いきなり引き離されたから、何かしちゃったんじゃないかと思って咄嗟に謝ったけど……

なんとも言えない空気が私達の間に流れる。


それにしても私……何で、あんな声……


耳元で聞こえる吐息も、囁く甘い声も

その全てが私の神経を逆なでた。