「桜、ついてる」
「え、あ」
さっき舞ってた花びらがついちゃったのかな。
とりあえず頭に手を持っていきぱんぱんっとはたいてみる。
が、桃色の花弁はいつまでたっても落ちてこない。
「そこじゃなくてもっと左」
「……と、ここ?」
「違う。もういい。俺取るから」
え?と聞き返す間もなく、突如縮まる私達の距離。
緊張のあまりぎゅっと目を閉じた瞬間、ふわりと髪に触れた指先。
取れた……のかな?
「あ、ありが――、」
翠君に御礼を言うことができなかったのは
くいっと肩を引き寄せられ、背中に腕が回ったから。
頬に当たる柔らかい髪。
本家の明かりが肩越しに見えた。
「……みど、りくん?」
いつものように冷たい彼の体温。
そして、異常なほど熱い私の体温。
身体が密着したせいで制服が擦れる。
……ど、うしたんだろう。
引き寄せられてるから顔は見えない。見えたとしても、太陽が沈んだこの時間じゃはっきりしないかも。
胸が締め付けられるほど心臓が動き、頭がぼうっとしてきた。

