明らかに温度差のある室内。

私は嬉しい。だって二人きりなんてそうそうなれるものじゃないから。


……でも翠君は違うんだろうな。


「引きとめちゃってごめんね、柚ちゃん。遅くなっちゃったかな」

「あ、いえ大丈夫ですよっ」


仕える家系は代々、本家の近くに家を持つ。

それにここは敷地内だし、本家にいたと言えばお父さんもお母さんも暗黙の了解をしてくれる。

話も終わったからそろそろ失礼した方がいいよね……



「それじゃ翠、柚ちゃんを家まで送ってってね」

「は?」

「え」



彰宏さんの声に私達が反応したのは、ほぼ同時だった。

突如言われたその言葉に脳内がストップ。


正直、嬉しいんだけど……それじゃ彼に悪すぎる。


「あの、私なら大丈夫ですよ」


それに、さっきりっちゃんとあんな話をしたばかりなのに――

今二人きりになったら、ちゃんと顔を見れる自信がない。